その人妻と知り合ったのは、高1のときだった。
実家が田舎町の外れの堤防沿いにあり、隣近所といっても200メートル以上離れた、まさに一軒家だった。
僕は犬を買っていたので、よく暗い夜道を月明かりと懐中電灯だけで散歩していた。
堤防には逆水門と呼ばれる大きな建造物があり、その近くは階段状になっているので、そこに腰掛けてひとりボーっと考え事をすることもあった。
その日は先客がいた。
女の人が僕のいつもの場所に腰掛けた。
最初、気まずいなーとか思ったが、お気に入りの場所を取られたので、少し離れたところに腰掛けて、犬と遊んだ。
近くに民家はなく、この辺りで唯一の外灯が少し離れたこの場所をかすかに照らしていた。
女の人もこっちに気づいて、肩越しにこっちを見ていることに気づいた。
少し怖くなって、帰ろうと立ち上がると
「あの・・・」
と女の人が声を掛けてきた。
「何?」
僕は反射的に答えると、女の人は逆にびっくりしたみたいで、
「あっ!?ごめんなさい。こんなこというの恥ずかしいんだけど、お金貸してください、少しでいいんで・・・財布、持ってこなくて」
整った顔立ちだったが、顔にはあきらかに打たれて、腫れたあとがあった。
「ごめん、ほんの少しでいいの・・・あの、うちに帰れなくて」
話している間も彼女のお腹がグゥーっとなってるし、あきらかに異常な状態だった。
僕の財布にはコーヒー代程度しか持ってなかったが、コンビニで買った朝御飯用の菓子パンを持っていたので、彼女に渡した。
彼女はあっと言う間に菓子パンをたいらげた。
コーヒー代も渡そうとしたが、彼女は固辞して僕に何度もお礼を言い、少し話をした。
「行くところがなくて・・・」
彼女は理由を言わなかったが、顔や履物を見ればだいたい想像がつく。
僕はそれ以上詮索しなかった。
昨日の夜から丸一日何も食べてなく、ずっとここにいたようだ。
年齢も聞いた。僕の母より少し年下だったけど、それ以上に若く見えた。
「えっと、あなたは大学生?」
暗がりのせいか、それぐらいにみえたらしい。
僕はガキに見られるのが嫌だったので、大学4年とうそぶくと
「お母さん、ずいぶん若いときに結婚したのね。うちの子なんかまだ小学生よ」
と笑った。
少しさみしい笑い方に僕は不安になって、
「おばさん、変なこと考えてたら、ダメだよ?お金、少しだったら貸してあげられるから」
そういうと、彼女は笑って
「心配してくれてありがと。ホント、死のうと思ったけど・・・大丈夫だから」
僕は彼女の隣に腰をかけて、たわいもない話をして彼女の家出の原因には触れなかった。
横顔を見ると、こんな隙だらけで、自分のことを話す年上の女に少し酔ったんだと思う。
女もそれなりに経験してたけど、丸一日風呂に入っていない濃い女の体臭にクラっとなった。
偶然を装って重ねた手ををぎゅっと、握ると彼女の身体がびくっと反応した。
だけど、何事もないように僕が話を続けると、
「あはは・・どうしよう・・・今、すっごいドキドキしてる」と彼女は照れたような笑いをした。
僕は身体を寄せてくっつくと、スカートから覗く膝に手を置いた。
【「あっあっあ・・・嫌、抜かないで・・・」家出した人妻と出会った…】の続きを読む