ボクは出されたお茶を一口すすった。彼女も言わんとするところは察したようで、黙って頷いた。
リビングでテーブルを挟んで座っていると、ボクの中に再び「場違いだ」という思いがよぎった。
しらふであれば、きっと居たたまれなくなっていただろうが、酔いがボクを部屋に留まらせていた。
…やけにねむいな…やばいぞ、もう…帰らないと、帰れなくなる…調子にのって飲みすぎたか…。
急に目蓋を開けていることが辛くなってきた。ただ酔って眠くなるのとは、違う気がしていた。
「じゃあ…ボクはそろそろ…」
言いかけて腰がくだけた。ボクを見つめる彼女が満足そうに微笑んでいるような気がした。
「だいじょうぶですか…?無理しないで…わたし、シャワー浴びてきますね…ふふっ。」
焦点の定まらないボクの目の前で、彼女は立ち上がって一枚ずつ服を脱ぎ始めた。
日中仕事場で着ていた服が彼女の足元に落ちてゆく。下着姿になると、彼女は浴室へ向かった。
「…少し、横になっていてくださいね。…すぐに戻ってきますから。」
浴室のドアが閉まる音が聞こえた。白い下着姿の映像を反芻するうち、知らずにボクは勃起していた。
シャワーの水音が止んで暫くするとバスタオルに身を包んだ彼女が戻ってきた。仄かに湯気が香る。
白い肌が火照っていた。化粧を落した表情は、いつもより少し幼くみえた。可愛らしいと思った。
相変わらず酔いは残っていたが眠気は引いていた。何かがおかしい。頭の奥底で警報が鳴っていた。
「…奥さんとは…仲がよろしいんですよね…?」
彼女の声は耳に届いているが音が曲がって聞こえてくる。まるで機械的に操作されたかのような音色。
「…彼と…初めて…だったんですけど…感じなかった…んです…おかしいんでしょうか…わたし。」
やはり何かがおかしい。耳鳴りに似た違和感を覚えた。理性的な意識が霞み始めているように感じた。
【「うふふっ。すごく…熱いわ…」同じフロアで働く娘に誘われて(2)】の続きを読む